第8回 レンタルモデルへの切り替えに伴う企業判断
目次
・レンタルビジネスのチャンスとリスク
・レンタルの切り替えに伴う構造変化
・レンタルビジネス参入への判断基準
前回の話でIoTと、シェアリングの関係性を確認しましたが、
C2Cシェアリングサービスの多くは、IIoTの発展によりB2Cのオンデマンド(レンタル)サービスに移行すると考えられます。
その際に企業(B)的立場から見ると、どのように販売のモデルからレンタルのモデルに切り替えを行うかが重要となってきます。
レンタルビジネスのチャンスとリスク
一つ重要な観点として、レンタルモデルに移行することは、企業側にとってチャンスとリスクを共にはらんでいるということがあります。
ここでいうチャンスとは、購入は高すぎてできないけど、レンタルだったら使ってみたいというユーザー層の獲得です。
例えば、売価10万円の掃除機があったとして、「一括では買わないが、一ヶ月1,000円のレンタルだったら借りたい!」というユーザーがこれに属します。
便宜的にこれらのユーザーを「ポテンシャル層」と呼びます。
逆にリスクは、今までは購入していた層の一部がレンタルへと移行することです。
「今までは10万円を出して購入していたけど、そんなに頻繁に使うわけではないから、レンタルにしようかしら」というユーザーです。
これらのユーザーを「移行層」と呼ぶことにします。
レンタルの切り替えに伴う構造変化
さて以上の情報をまとめると、レンタルの切り替えに伴う変化は、以下のイメージのようになります。
さてここで、購入モデルの際の購入層を100%ととし、レンタルモデル導入後の移行層の割合をa、ポテンシャル層の割合をbとする。
すると以下のようになります。
また、購入モデルの際の売価をx円とし、
レンタルモデルの際の単価をy円、一人当たりに対しての課金回数をr回とする。
本来であれば、レンタルモデルに切り替えることにより、
物流費や、オペレーション費用などの経費が発生する可能性がありますが、
一度それは置いておきます。
レンタルビジネス参入への判断基準
さて企業が、今まで通り販売モデルのみでいくのか、それともレンタルモデルを導入するのか、判断をする際の指標として、以下の式が考えられます。
損益分岐:(a+b)yr = ax
左辺(a+b)yrは、レンタルモデルにしたことによって得られる売上、
右辺axは、レンタルモデルにしたことによって失われる売上です。
つまりこの等式が成り立つ時、得られる売上と失われる売上が等しくなるため、
レンタルモデルにしても、企業の売上は変わらないと言えます。
企業としてはレンタルモデルに切り替えることで、売上を上げたいと考えるので、
(a+b)yr > ax
が成り立てば良いことになります。
この中で企業側が決定できる要因は、レンタルの単価yなので、式を変形すると
y > ax/(a+b)r ・・・(1)
となります。
例) 先ほどの10万円の掃除機の場合を考えてみます。
購入からレンタルに移行する「移行層」が10%、
レンタルモデルに変わり新たに使用し始める「ポテンシャル層」が30%、
1人の顧客に対しての課金回数が5回と見込まれていたとすると、それぞれ
x=10万
a=10%
b=30%
r=5
となります。
この時(1)の式は
y > 10%*10万円 / (10%+30%)*5
> 1/20 *10万円
> 5,000円
となるので、レンタル代金を5,000円以上にすることが、レンタルモデルに切り替えて売上を増加させる条件となります。
今後レンタルモデルに移行する企業が増える中で、どのようにKPIを設定し、価格を決定していくかが非常に重要になっていきます。