第6回 シェアリングビジネスにおける「オーナー」と「ユーザー」の重要性
目次
・「提供する側」と「利用する側」どちらが大事?
①立ち上げ期
②スケール期
③スケール後
「提供する側」と「利用する側」どちらが大事?
個人間でのシェアリングサービスには、必ず「提供者」と「利用者」がいます。
(以下では便宜上「提供者 = オーナー」と「利用者 = ユーザー」と呼ぶことにします。)
Airbnbであれば「オーナー = 家を貸し出す人(ホスト)」と「ユーザー= 家に泊まる(ゲスト)人」、
またUberであれば「オーナー = 乗客を車で運ぶ人(ドライバー)」と「ユーザー= 乗客(ライダー)」に分けられます。
このようにほとんどのシェアサービスでは「オーナー」と「ユーザー」が存在します。
さて質問です。
オーナーとユーザー
よりサービスをスケールさせるために必要なのはどちらだと思いますか?
正解は、どちらも大事です。
これだけだと「ふざけるな!」と怒られてしまいそうなので、補足します。
シェアリングサービスの性質上、「オーナー」と「ユーザー」は、いわゆるニワトリと卵の関係にあります。
「オーナー」がいるから「ユーザー」がいる、「ユーザー」がいるから「オーナー」がいるという二つの可能性があるということです。
よって次の二つの仮説があります。
仮説①
最初に物を貸し出す「オーナー」が生まれる → それを借りたいという「ユーザー」が現れる。
仮説②
最初に特定のものを借りたい「ユーザー」がいる → それを貸してくれる「オーナー」が現れる。
結果としては「オーナー」も「ユーザー」もなくてはならない両輪なのですが、
そのサービスがどれくらいスケールしてるのかによって、どちらがより大事かが変わってきます。
①ローンチ期
ことスタートアップ、特に立ち上げ時期においてどちらが重要かと問われれば、
間違いなくオーナーが答えになります。
サービス初期のまだ利用者が多くない状態では、まずはシェアリングが発生させるよう環境を整えることが大事です。
もしまだ十分なオーナーの数を確保できていない状態で、ユーザーを呼び込んでしまったらどうなるでしょう?
例えばUber初期の段階のユーザーが、配車しようと思ってアプリを立ち上げたのに、
マップ上に全く車がなかったらどう思いますか?
落胆されるとともに、「こんなアプリ2度と使わない」と思われたり、
「全く使えないアプリ」とレビューを書かれる危険性すらあります。
これではどんなに需要のあるサービスでも、スケールすることはありません。
逆に、オーナー側がしばらくの間、ユーザーとマッチングできなかったとしても、
登録の手続きなど行っている手前、しばらくは待ってもらえるはずです。
特にサービス初期では、顧客満足度が非常に重要な要素になってきます。
サービスをローンチして間もない頃のUberは、現在のように一般の自家用車ではなく、
リムジン車両とのマッチングサービスでした。当然顧客満足度は高まり、ポジティブな口コミが拡散されました。
これはまさに顧客体験の追求の重要性を示す良い例と言えます。
②スケール期
ローンチを経て、ある程度のオーナー数を確保できた時に、今度はユーザー確保の重要性が上がります。
ローンチ期にオーナーを獲得できていれば、ユーザー数と利用回数を増やしていけばいくほど、自然と収益を確保できます。
③スケール後
めでたくサービスがスケールし、多くの利用者を獲得したとしても、
これで安心という訳にはいきません。
ユーザーの獲得にばかり気を奪われていると、足元をすくわれかねません。
これもUberの例になりますが、Uberが2014年に日本への上陸を果たした頃、
シリコンバレーでは、Uberと同様のライドシェアを提供する「Lyft」というサービスが流行り始めてました。
Uberが生まれたシリコンバレーで、なぜ別のライドシェアサービスが流行ったのでしょうか?
その理由は、Lyftが取った戦略にありました。
Lyftは、すでにUberに登録しているドライバーにターゲットを絞り、
Uberよりも良い条件をドライバーに対して提示したのです。
これにより、UberからLyftへドライバーの流出が始まりました。
そして、多くのドライバーがLyftへと移った結果、Uberのライダーが乗れる車の台数が減ったのです。
この結果、Uberを利用していたライダーも、Lyftへの利用へとシフトし、最終的にLyftのシェアが拡大したのです。
この例からわかる通り、競合の参入に対抗するためには、オーナー(ここでいうドライバー)の満足が重要になります。
以上のように、オーナーとユーザーの獲得の重要視は、サービスがどの段階にあるのかによって変わってきます。