第9回今後のシェアリング業界の可能性
目次
・既存事業者との共存
・シェアリング業者の統廃合
・シェアリング経済圏の形成
新年あけましておめでとうございます。
ようやくものぐさモードを脱し、筆を取ろうと思い立った今日この頃です。
今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
①~③までの数字はそれぞれ
①既存事業者との共存
②シェアリング業者の統廃合
③シェアリング経済圏の形成
を表しています。
①既存事業者との共存
昨今シェアリングサービスがブームになっているとはいえ、既存の事業者がなくなるわけではありません。
まず既存事業者とどのように共存していくかが一つ目のポイントになります。
ここでいう既存事業者とは、ライドシェアサービスでいうところのタクシー事業者や、民泊サービスでいうところのホテル事業者が該当します。
例えばUberなどのライドシェア事業者は、タクシー業者の顧客を奪い取る可能性があるため、競合の関係性にあります。
実際東京では、2017年の1月30日より初乗り料金を、以前の初乗り700~730円から最初の1kmまでが410円に引き下られました。
またAirbnbなどの民泊事業者は、ホテル業者の宿泊客を奪う可能性があるため、ホテル業界から批判を浴びています。
しかし、シェアリングサービスが既存事業者をすべて飲み込む可能性は低いと考えられます。
やはりシェアをすることに抵抗を感じる層は、性別、年齢、人種問わずいますし、
また消費者が所有しているものよりも、事業者が提供しているものの方が安心感やクオリティが高いという期待が存在しているためです。
そのため、シェアリング事業者と既存事業者は価格的、法的な落とし所を探りつつ、
共存していくことが最も可能性の高いシナリオと考えられます。
まずは価格面での落とし所を考えてみると、可能性として考えられるのは
シェアリングサービスの方が、既存事業者よりも提供価格が低いということです。
参考としてホテル事業者と、民泊事業者の1顧客あたりの収益構造を比較してみました。
収支構造比較(宿泊) ホテル vs Airbnb
この他にも、物件の維持費用などの固定費がかかってきますが、変動費用だけで比較しても、ホテル事業者が5割ほどの変動費がかかっているのに対して、民博事業者はほとんど変動費が発生していません。
ここから民泊業者の低下価格での宿泊施設提供に対して、ホテル業者が対抗して低価格のホテルを提供することには必ず限界があるということが分かります。
結果的に、低価格のホテルは民泊事業者に淘汰されていき、高価格、高付加価値のホテルが民泊事業者との差別化に成功し、生き残っていくと考えられます。
②シェアリング業者の統廃合
現在はシェアリングブームということもあって、似たようなサービスがいくつも乱立していたりします。
しかし、おそらく今後は必要な形態に集約されていくのではないかと考えます。
インターネット売買の例を見てみます。
インターネットでの売買には大きく分けて2つの形態があります。「ヤフオク!」に代表されるネットオークションと、「メルカリ」に代表されるネットフリマです。
両方ともネット上で売買を成立させ、売り手が買い手に発送したのちに金銭の授受が行われる、という基本的なサービスフローは同一つです。
しかし、ユーザー体験として売買成立までの待ち時間や、ユーザーインターフェースの作りであったり多々違いがあります。
それはメインに利用しているターゲットの違いに起因します。
日経新聞の調査によると、
ネットオークションは「40代男性、50代男性、30代男性」の順で利用者が多いのに対し、
ネットフリマは、「10代女性、20代女性、30代女性」の順で利用者が多いというデータがあります。
(参照:日経データディスカバリー https://vdata.nikkei.com/datadiscovery/20shopping/)
ここからネットオークションは中高年の男性、ネットフリマは若い女性がメインのターゲットになっているということが読み取れます。
同一のサービスでも、提供の方法やユーザーからのサービスの見え方によって、必要な形にが区分され、集約していくと考えられます。
③信用の共有
シェアリングサービスはプラットフォームを運営するという事業形態上、とても参入のしやすい業種のように見えますが、実は大きな参入障壁があります。それは「信頼」です。
厳密に言うと、信頼は事業者側への信頼と、ユーザー同士の信頼の二つがあると考えられると思いますが、基本的には表裏一体の関係にあると考えられるので、ここでは同一のものとして語ります。
例えば、もしライドシェアサービスを1から始めようとした人がいたとして、今の市場で成功することはあり得るのでしょうか?可能性はゼロではないかもしれませんが、かなり厳しい挑戦になることが予想されます。
それはuberという、事業者として信頼を持ち、なおかつ莫大な量のユーザーの信用情報を持った事業者が存在するためです。
このような参入障壁が、現行のシェアサービスへの新規参入を阻んでいる生命線だと考えています。
また、これは各サービスの参入障壁としてだけではなく、シェアリングサービスの経済圏の形成を助長すると考えられます。
つまり、今まではAさんがuberのアカウントとairbnbのアカウントを両方持っていても、別のuberユーザーから見るとAさんのairbnbでの信用情報は分かりませんでした。
しかし、サービス事業者間で信用情報の共有が行われることで、他のサービスでの利用評価が紐付けられるようになるのです。
このようにして特定のサービスの単一的な信頼ではなく、様々なサービスから多面的に信用情報を判断することができるようになると思われます。
それではその中心となるアカウントは一体何になるのでしょうか?
扱う情報の特性上、公共性の高さが必要になるので、マイナンバーなどが考えられるかもしれません。
しかし、マイナンバーは国が主導で行っており、事業者との連携がうまく行くかは未知数です。また、グローバルなサービスとの連携が必要となるため、日本国内で限定的に交付されているマイナンバーでは難しいと言わざると得ません。
なので、私が大本命と考えているのはfacebookアカウントです。
facebookは他のSNSと比べても公共性が高く、またすでにuberやairbnbなどシェアリングサービスのアカウントとの連携も行っているので、最も中心となる可能性が高いアカウントではないかと考えています。